悪夢

症状

ここでは、自分がしばらく前に会った人の話をしたいと思う。

その人は鬱病を患っているのだが、話を聞いて見ると実はそれだけではない。自分がザっと聞いた感じによるとPTSDをこじらせている模様。フラッシュバックやらが連続してある様子で、特に厳しいのは「悪夢を見る」という症状だ。

尚、これはあくまでも自分の推察である。実際の症状はケースバイケース。万人に共通する訳ではない。また、自分が実際に経験したことではないので、繰り返すが、あくまで自分の推察でしかない。

しかし、話を聞くだに胸が締め付けられる思いもするので、ここで記しておきたいと思う。

夢というのは不思議なものであり、何が作用してビジョンができるのかは自分にはさっぱり分からない。また、見たとしても起きる時には忘れてしまうと言う。不思議なことに、視覚障碍者にも夢を見る人がいる様子で、自分の親しい全盲の人が見ると言っていた。……実に不思議な現象だ。

ところで、これが良い夢ならば良いだろう。自分は夢をネタにした冗談をよく飛ばすのだが……例えば、「100万円が入っている財布を拾う夢を見たいものだ。」と言ったもの。実際にはあり得ない話なので冗談で済む……と自分では思っている。

ところが、悪夢となると話が180度違って来る。臨場感が極めて高い恐怖体験を味わうのだ。これは言葉にならないほどにツラいことだと思う。

例えば、自分も悪夢を見たことがある。それは大きな人形に斬られるというもの。子供の頃に見た夢だが、いまだに思い出すことがある。それだけ怖かったのだ。

それでは、この人のように悪夢に苦しむ人の場合はどうなるか。……聞くところによると、悪夢を見るたびに恐怖体験を味わうことになる。……毎日のように恐怖に襲われることになるのだ。

ちなみに、悪夢は人によって違うことだろう。何者かに襲われる夢、高いところから落下する夢など、とにかく恐怖の体験となって現れる。しかも、自分ではそれが夢であるとは考えないことだろう。なにせ恐怖が襲い掛かるならば「これは夢だ」などと冷静な結論を出せるわけもない。とにかく、恐怖に耐えなければならない。それが、悪夢なのだと思う。

夢は人によって違う。言わば完全なケースバイケースであると思う。しかし、大きく作用する要因は想像に難しくはない。その人の記憶が大きく作用するのだと、自分は思う。

そして、その記憶が強い恐怖によって支配されるものだと、それによって出来る夢は非常に怖いことだと思う。

では、その人の場合はどのような夢を見たのか。

この人はPTSDとのこと。しかも、子供の頃に家族からひどい目にあわされ続けたと聞いた。過去のことを聞くだに胸が痛む内容であった。話を聞いただけでも嫌なので、本人にとってみれば相当なものだったのだろうと思う。

そして、この人の夢である。……それは、「叩かれる夢」「家から閉め出される夢」「高いところから突き落とされる夢」と聞いた。自分が聞いた内容は数えるほどだったのだが、それが毎日のように続くと言う。自分がその立場だったなら、と思うと、想像を絶する恐怖に襲われることだろう。

ちなみに、その人は中途覚醒にも悩まされることもあり、時として過呼吸まで発生している。……なんとも、胸の痛む症状である。

これもあくまでも「自分が思うこと」である。万人の感じることではないかも知れないが、あくまでも私見と思って欲しい。

さて、この夢の対策であるが、自分は薬物療法が効果的……と考えていた。と言うのも、過去に悪夢に悩む鬱病の青年に会ったことがあり、その青年は薬物療法を受けていたからである。……しかし、この人に会って話を聞くと、自分の考えが浅はか過ぎたことを反省する。話はそれどころではないらしいからだ。薬物療法が有効とは限らない。それを自分は突き付けられた。

では、どのような対策があるのだろうか。

申し訳ないが、自分には有効な手段が思いつかない。薬物療法の効果が薄いならば、どうするか。
自分に出来ることは、その人に寄り沿うこと、味方になることだと思う。それは薬物療法のように即効性は認められないだろうが、気分を変えるのには有効……と信じたい。

いずれにせよ、自分はこの人に幸せになってもらいたい。そして、そのための支援は心を尽くして取り組みたい。どこまで出来るかは分からない。けど、その人の幸福をつかみ取るまでは、とにかく力を注ぎたいと、強く思う。

悪夢について取り上げてみた。この文章に対して共感を覚えた人、あるいは「自分はもっとキツイ」と思った人、それぞれだと思う。人によっては有効な対策が見つからないとも聞く。悪夢をこじらせることもあるのではないか、とも思う。

精神疾患は他の疾患と違って目に見えにくい疾患。しかも、人によって違うので、対処は簡単ではないだろう。

ちなみに、「病気と上手く付き合う」と言う人は少なくないが、恐怖と上手く付き合うことは不可能と思う。それだけに、そのような症状に苦しむ人の寛解を願うばかりである。